マイケル・ムアコック「夜明けの剣 ルーンの杖秘録3」

暗黒帝国から時空の狭間に逃げ出すという大技で逃げ切ったカマルグ国だが、それでも次なる襲撃におびえるあまり、主人公のホークムーン自ら敵地に潜り込むという全く意味の分からない戦略に乗り出し、結果またまた訳の分からない場所に飛ばされ海賊に捕らわれたり血を吸う妖怪と戦う話。

解説がなんだかとんでもなくて、ムアコックがどのようにしてこの作品を書いたかと言うことに関する本人のインタビューを載せているのだが、それによるとムアコックは全ての構成と出来事を完璧に作り、しかもそれは四ページごとに事件が起こるというようなもので、それにその場で肉付けをしていったとのこと。これはなかなかなるほどなあと思わせるものがあり、そうやってよむと本作は極めてハリウッド映画的というか、アニメ的というか、とにかく俄然型にはまっている印象がしてくるから不思議である。本作ではなんだか物語は訳の分からぬ展開を見せ、主人公は理不尽にも敵地に乗り込み、そこから探索の旅に出かけたとおもったらすぐさま窮地に陥り、そこを脱したと思ったらまたまた見知らぬ都市でどうでもよい抗争に巻き込まれたりと、忙しいことこの上ない。なんだかとっても不自然な気がするのだが、作者のコメントを見ればああ、これはゲームの要領だと頷かされるのである。あの、マザーとかFFとか、お買い物ゲームというか、一部では盲導犬ゲームと呼ばれていた、あれね。ボタンを連打していれば勝手に物事が進むという、あの感覚。それはそれで面白く、なんだか楽しく読めました。ハリウッド映画といえば、港町で抗争に巻き込まれるシナリオは、なんだか「椿三十郎」みたいでもある。しかし、全く残るところがない本だなあ。。