桜坂洋「スラムオンライン」

スラムオンライン (ハヤカワ文庫 JA (800))

スラムオンライン (ハヤカワ文庫 JA (800))

オンライン格闘ゲームにのめり込む大学生になぜか彼女ができるオタク版シンデレラストーリー。

編集者から「とにかく一番書きたいものを書いてくれ」といわれ、作者はこの小説を書いたとあとがきに書いているが、それがこれか。ネットにはまりこみ他者との交流に機能不全をおこしている大学生(男)が、引きこもりの学生をばかにしつつ受業にせこせこ出席する中でなぜか女の子と出会い、その女の子は理解不能な動機で男の子につきまとい結果的に恋に落ちる。なんだかもう、やりきれないくらいに恥ずかしい。男の子はネットの格闘ゲームに熱中し、その対戦シーンが延々と描写されちゃったりして、なんだかデジャブが。。そうだ、高校生くらいの時にこういう人いたなあ。スト2の技をいかに繰り出すかと言うことを得々と語るひと。語っている内容のダイナミックさと、当人のこじんまりさというか、スケールの小ささが痛かったなあ。。これもそんな感じの小説です。結局描かれているのは、格闘ゲームマニアが彼女を作るというだけの話で、その中にネットのお話もちょっとは出てくるがそれはあくまでおまけ、というか格闘ゲームの話をしたいだけで、物語そのものにはほとんど関係がない。こういう設定が、作者にとってはかっこよい話なんだろうなあ。ある種の願望の投射なんだろうか。なんだか気持ち悪くなってきてしまった。なんかもう、寂しくてたまらない。サイバーパンク的な小説かとおもったらまったくちがうんだもんなあ。。買う前にもう少しだけ中身を読んでおくんだった。