飛浩隆「ラギッド・ガール」

仮想世界の発達の過程と、その崩壊の原因を描くSF短編集。

人間の嗜虐的な欲望を満たすために作られた、AI達が自立的に暮らす一つの仮想世界の崩壊を描いた「グラン・ヴァカンス」の続編。ずいぶん前に読んだので憶えていないが、確か面白かった気がするなあ。その後に読んだ「象られた力」がこれがまた面白くなくてなんだかなあと思った気もかすかに憶えている。それで本作はと言うと、これがまたあんまりでした。とにかく、「グラン・ヴァカンス」の設定があんまり趣味が良くなくて、要は、嗜虐的な人間が擬似的な人格を持ったAIを虐待して遊ぶ仮想世界中のグロテスクな遊園地が舞台なので、そもそもあんまり気持ちの良い設定ではない。また、作者はどうもグロテスクなもの、奇態なものに執着があるらしく、登場人物がグロテスクだったりとんでもない死に方をしたりとなんだか座りが悪い。それでねえ、一方で全くグロテスクではなく、AIの生活を極めてノスタルジックにというか、叙情的に書いている作品もあるのだが、これが全く面白くない。これはおそらく文章の相性の問題だなあ。やはり、なにか極端なもののなかから美しさを描こうとしているのかなあとは思うのだが、ちょっとけれん味が強すぎるというか、思わせぶりすぎるというか。。物語としては構築もされ、ある種の重みも感じられるのですが、なにか好みが合わない作品集でした。