ジョージ・R・R・マーティン「七王国の玉座5 氷と炎の歌1」

七王国の玉座〈5〉―氷と炎の歌〈1〉 (ハヤカワ文庫SF)

七王国の玉座〈5〉―氷と炎の歌〈1〉 (ハヤカワ文庫SF)

中世イギリスをなんとなく舞台にした剣と魔法と策略と戦争を描いた一大大河ロマン第一部完結編。

とはいうものの、全く完結していない。サンサは首都で囚われの身、アリアはなんだか極めて危機的状況にいるような気がする。ケイトリンとロブは軍勢を従え南下中で、決定的な戦いには勝利はしたが今後の展開は予測不能、ジョンはあいかわらず北の方でうじうじしているのだが、なんだかそちらも雲行きがあやしい。つまり、なんだかとっても気になって仕方がない。この作者は本当に物語が上手いなあとしみじみ感心してしまうのだが、とにかく読ませる、そして先が気になる描き方をするのである。それはそれぞれの登場人物に対する、極めて注意深く当てられた照明の加減のせいでもあるが、それにもまして物語の構成力というか、物語の進め方が本当に上手い。びっくりしてしまうのは結構主要な登場人物と思われた人々があっさり死んでしまうことで、この調子だと誰もが安心出来ないなあ。いつあの素晴らしいキャラクターであるティリオンが殺されてしまうか、これでは全く予想もつかないよ。しかし、第一部と言いながら全く完結していない構成と言い、多くの登場人物にそれぞれ与えられた物語の厚みと言い、とにかく先が気になって仕方がない。第2部が始まるのを待つべきか、それとも単行本を買ってしまうか、悩ましいところだなあ。