マイクル・Z・リューイン「探偵家族」

探偵家族 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)

探偵家族 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)

イギリスのバースに住む、おそらくイタリア系移民と思われるルンギ一家は親子で探偵業を営むが、現在の主力であるアンジェロ(妻帯者、子ども二人)のもとには夫の日常動作への異常に関する悩みを持った依頼人や娘の不良行為疑惑、はたまた妹の妻帯者との交際など様々な事件が訪れ、家族の全てが当事者となる中でいろいろな秘密が明らかになる。

帯には「ファミリーってあったかいんだ」と書かれているが、本作に家族の暖かみなどを一切感じることができなかったのは一体なぜなのだろうか。物語は相互の不信とあきらめ、そしてそれぞれの家族の愚かな行為が横溢し、むしろ家族でいることの難しさと醜さを存分に味あわせてくれる構成になっているのだが。だいたい、ほとんどの騒動は家族がきちんと話をすれば片づくことのような気もして、なんだか良く訳が分からない。また、主人公の子ども二人のあまりに幼稚で愚かな姿には、作者は子どもに必要以上の偏見と悪意があるのではないかと思ってしまう。物語自体は様々なエピソードを組み合わせ、また視点をめまぐるしく入れ替わる多層的な構成だが、これも全体のちぐはぐとした印象に拍車をかけている。とにかく、落ち着きが無く据わりが悪い。なにか、僕はちょっと間違った読み方をしているのではないか。少なくとも裏表紙の解説にある「みんなで楽しめる家族団欒ミステリ」では無いことは間違いが無いと思うのだが。