マイクル・Z・リューイン「季節の終わり」
- 作者: マイクル・Z.リューイン,Michael Z. Lewin,石田善彦
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 1996/08
- メディア: 文庫
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相変わらずの見事な探偵小説。明るい自己卑下を繰り返すサムスンの言葉は読んでいるだけで心が明るくなる。例えばこんな調子。「ロジャーとの話しあいで、わたしの気分はすっかり明るくなった。ロジャーがどんな人間であるかは知らないが、依頼人を絶対に裏切らない山犬が高貴な山犬であることだけはたしかだからである。」物語自体は細部が徐々に全体を構成する、多少分かりづらい構成であるため、ある時点で思わぬ事実が発覚した時に、これは一体誰で何だったのかと首をかしげてしまうこともある。でも、登場人物は親切にも表紙の裏側に書いてあるし、すこし戻れば分からなかったことも思い出せる。とにかく、この落ち着いた雰囲気と語り口、そして基本的には人間の心に対する明るいまなざしに、読んでいて心が穏やかかつ明るくなるのである。