坂口安吾「勝海舟捕物帖」

勝海舟捕物帖 (人物文庫)

勝海舟捕物帖 (人物文庫)

明治初期、名探偵新十郎は警察から依頼され事件の解決を進めるのだが、それに対抗意識を燃やす剣術使いの虎之助は、新十郎の鼻をあかしてやろうと勝海舟に知恵を借りる。ところがそれは全くの的はずれであることばかり、勝海舟は毎回負け惜しみを言う話。

坂口安吾は創作に関しては全て読んだ記憶があるが、こんなタイトルの捕物帖があったとは知らなかった。これは掘り出し物、急いで読まなければと思って手に取ったのだが、何かおかしい。どこかで読んだ気もするし、短編集と思われるのに半端な数しか入っていないよ。と思って解説を見たら、なんとこれは名作「安吾捕物帖」の抜粋を「勝海舟捕物帖」と改題して出版したものらしい。いったい、これはいかなることなのか。解説を読んでもさっぱり分からないのは、そもそも安吾は「勝海舟捕物帖」なる表題の作品を出版したことがあるのかないのか。もしこれが、出版社が勝手に付けたタイトルであるとすれば、これは全く理解しがたい。もしそうだとすれば、僕みたいにこれは安吾の未発表作品かと思い、手に取ることを狙ったのではないかと思われても仕方がない。また、そう思われても仕方がないくらいに、解説に本作品集の表題に対する説明が見られない。いったいこれはどういうことか。不愉快きわまりない。