ライダ・モアハウス「アークエンジェル・プロトコル」

アークエンジェル・プロトコル (ハヤカワ文庫SF)

アークエンジェル・プロトコル (ハヤカワ文庫SF)

破滅的戦争以降、人々がほとんどフィジカルにネット接続するようになった世界で、ネット上に「天使」が現れる。そのためキリスト教原理主義的勢力が政治力をつよめるなか、宗教組織から破門された主人公の元警官で探偵女性の元に、ネット上の「天使」は偽物であり、その仕掛けを暴いてほしいと依頼する男が現れ、結果主人公は大変な危険に襲われながらも隠れた真実を暴き出す。

なんだかなあ。前半戦はそれなりにリズム良く面白くもあったのだが、後半は構築した(というほど構築はされていないが)世界にのめり込む自閉的な描写が多くなり、なんとも面白くないというか、興醒め。思わせぶりな台詞も空振りしている印象が否めず、これはそもそも作者の文章力の問題か。こういうのを読んでいておもうのだけれど、結局80年代サイバーパンクとその周辺の幻想的な作品達、つまりルーディ・ラッカー、ディック、ギブスン、そして多少傾向は違うがバラードの世界の、劣化コピーを超えられているのかなあ。アイディアとしてはギブソン的だし、そのアレンジとしてファンタジー色を加えているのだろうが、その不条理さや戯画的雰囲気も、これもどこかで読んだことあるよ。当然、モノとしての良さはオリジナルかどうかということよりは物語の作られ方と言うことだと思うが、結局の所そこまで至っていないというか。。要は、あんまり面白くなかったです。