ジョージ・R・R・マーティン「七王国の玉座1 氷と炎の歌1」

七王国の玉座〈1〉―氷と炎の歌〈1〉 (ハヤカワ文庫SF)

七王国の玉座〈1〉―氷と炎の歌〈1〉 (ハヤカワ文庫SF)

中世イギリスを彷彿とさせる島国における群像歴史大河小説第4弾。役立たずの王の右腕にされてしまったエダードは、王を殺害する策謀に絡め取られ幽閉される。妻のケイトリンは血迷って王の妻の一族のティリオンを捕虜にするが、これは状況のいっそうの悪化を招き事態が深刻化する。それとは別に、海の向こうでは古代王家の女性が蛮族との交接に励み、北の辺境ではエダードの私生児が鬱々と見張り番の責務を果たす。

この巻にいたって、一見重要そうに見えた人々がばたばたと死んだり失脚し始め、物語はがぜん加速度を増して行く。一方で、第1巻より始まった登場人物の分派と展開もますます激しくなり、主要人物の名前は分かるものの、従者や護衛の騎士の名前など覚えられるはずもなく、目の前を淡々と通り過ぎて行く。しかし、相変わらずすばらしい。どの巻を読んでも思うので自然と感想が同じような物になってしまうのだが、発達不全で肢体不自由者的特徴をもつもの、王の息子ながら私生児として北に放逐される少年、敵へのおそれが息子への異常な愛情に転化した城主の女性、島を追われながら復讐を夢みて辺境の王の妻となる女性など、痛々しくも生々しく、全く救われ無いながら輝きを持つ人々の描写は、なにか異常なものが作者に乗り移って書かせているのではないかと思われるくらいに深みがあり、力強い。後一冊で終わるこのシリーズを読み終えたら、続きは既刊の単行本で買うしかないかなあ。とても毎月一冊は待つことが出来ないよ。