マイケル・ムアコック「赤い護符 ルーンの杖秘録2」

邪悪な暗黒帝国のマッドな科学者によって眉間に宝石を埋め込まれてしまったホークムーンは、前作でその宝石による暗黒帝国の支配を断ち切ったのだが、本作ではそのおかげでずいぶん遠くに来てしまったため愛する女性のいるフランス南部あたりの小国にとって返そうとする。ところが、途中で暗黒帝国に捕まったと思ったら逃げ出したり、狂気の海賊に襲われたり、あろう事かアフリカの奥地に愛する女性を求め探求の旅に出る。

結構面白い。前作は主人公のひねくれた性格と、どう読んでもイギリス帝国を思わせる暗黒帝国の執拗なまでの非人間的でゴシックな描写が秀逸だったのだが、終盤でRPGのシナリオを思わせる展開に突入し、今後どうなるやらと思わせたが、本作では主人公の被害妄想的ひねくれた性格はそのままで、ゲーム的シナリオ展開はむしろその勢いを増し、エキセントリックなまでに予測不可能な、これは破綻しているのではないかなあと思わせる程度にまで突き進みとても爽快。ムアコック的な底の浅い晦渋さもこれでは感じる暇がない。こっちの方が僕の趣味には合います。