山田正紀「カオスコープ」
- 作者: 山田正紀
- 出版社/メーカー: 東京創元社
- 発売日: 2006/07/27
- メディア: 単行本
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最近の山田正紀氏の作風は、なにかホラーじみたサイコスリラー的な物が多いように見受けられるように思えるのだが、本作もその流れをくむもので、なにがなんだかさっぱり分からない。断片的なイメージの挿入と茫漠とした物語の構築のされかたはさすが山田正紀氏と言うべき物があるのだが、なんともうやむやに終わってしまう物語自体が精緻に構築されていたと後書きで告白されてしまうと、なんとも面白くないというかがっかりというか。むしろ、何も考えずに闇雲に書いてしまったら何となく物語の結末があらわれてきて、それでも多少のつじつまの合わない部分が残ってしまってごめんなさいと言われた方が、すっきりするのだが。とにかく、なんだか最近の山田氏の文章は、過分にスタイリッシュであろうとしすぎている気がしてなんだか痛々しい。むしろ、どんなにかっこつけようとしても、なんだかとっても泥臭く、しかし猥雑で単純な力強さに溢れていたころの文章の方が好きであったし、いまでもそのような文章を書けると思うのだが。