アルフレッド・ベスター「分解された男」
- 作者: アルフレッド・ベスター,沼沢洽治
- 出版社/メーカー: 東京創元社
- 発売日: 1965/04/30
- メディア: 文庫
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1953年に出版されたものなので、53年前の小説と言うことになる。さすがに53年前に想像された未来は異常な雰囲気がみなぎり、なんとも奇妙な感覚に襲われた。世界観は未来世紀ブラジル的シュールな感じで、今読むとむしろ80年代的ポップな感じがするのも不思議である。しかし、この本の最大の見所は翻訳にある。これがまた、よくまあ問題にならなかったと思うくらいに、常軌を逸した翻訳なのです。登場人物はべらんめい口調でしゃべるかと思えば(「べらぼうめ!」とかね)、差し挟まれる警句はなんとも日本的(「濡れ手で粟のつかみ取り」とか、「一両、二両」なんて単位が平気で使われる)、おそらく原文の雰囲気とは似てもにつかぬものになっているに違いない。ここまで調子が良いと、文章のスタイルだけではなく、内容もずいぶん手が加えられているのではないかと気になってたまらない。とにかく怪訳、なかなか面白い経験でした。物語自体は普通。面白いんじゃないでしょうか。少なくとも、いろんな意味で読んで損は無い。