ジョージ・R・R・マーティン「七王国の玉座3 氷と炎の歌1」

七王国の玉座〈3〉―氷と炎の歌〈1〉 (ハヤカワ文庫SF)

七王国の玉座〈3〉―氷と炎の歌〈1〉 (ハヤカワ文庫SF)

中世イギリスを彷彿させる舞台で、多少の魔法やドラゴンなども出てくるが(本作にはほとんど出てこない)、基本的には権力争いとそれにまつわる人々の争いと生き様を描いた歴史大河ドラマ3冊目。

本作では、発育に障害があり手足が短くうまれついた、悪者役の一族の鬼っ子ティリオンが物語を牽引する人物となり、多くのエピソードは彼の周りを旋回する。この人物はまた良く構築された性格を持ち、バックグラウンドとしては王の権力を奪おうとたくらむ王妃とその一族につらなり、その家族に心からの帰属意識を持ちながらも、自らの障害のために一人気ままな生活を行う。その天性の口の悪さにもより、他人から恨まれ憎まれもするのだが、その実ずいぶんとリベラルな物の見方の持ち主でもあり金にも汚い。おそらくこの物語の最も重要でかつ複雑な人物だと思うのだが、その人が誘拐されて逃げ出すまでを本巻では書ききり、おかげでこっちは本置くにあたわず、睡眠時間がずいぶん削られつらかった。表紙の絵はたいへんいかがなものかと思うが、それ以外は圧巻の一冊。次は来月か。むむむ。