野尻抱介「ベクフットの虜 クレギオン7」



総員3人の弱小宇宙運送業者の物語の第7弾。家出状態で会社に参加した若年女性乗組員は、その危険な勤務内容を両親に知られてしまい大変な精神的危機へ。そんななか、軍隊が封鎖中の星への運送依頼を受託した会社はその星へ向かうが、途中で連絡回線を乗っ取られ、星に住む海賊に拉致されてしまう。その星の海は一面藻に覆われ、未確認の条件によって白い花が突然咲き乱れるという不思議な気候を持っていた。

宇宙運送業者のシリーズの現状では最終巻となるお話。相変わらずの物語運びの上手さと展開の早さ、無理のないキャラクターの性格造形と発話、確かな世界観と細部構築の細やかさは、結構曲芸的な域まで達し、ともすれば全く気づかずに読み通し、なにも心に残らずに読み終えてしまうくらいの危うさを備えてしまっていると言ってしまうのは言い過ぎか。一作ごとに読んでいると、丁寧に書かれているのは分かるのだが、だんだんと物語の毛深さというか、ごつごつとした肌触りのような物が失われて行き、なにかやたら通りの良いすべすべした触感の文章が表れてきてしまい、そもそもそれ以上のものが書ける作者だけに、どうやらこの設定に飽きが来て、惰性で書いている部分がどこかしらにあるのではないかと考えてしまうのである。でも、面白かったですよ。超特急で読み終えてしまったけど。しかし、二人の女性乗組員が、海賊の支配する潜水艦の中でビキニタイプの衣装に着替えさせられるのは、なぜなんだろう。挿絵付きの媒体で発表されていることを思うと、担当編集者からの要望だったのか。それとも作者の単なる趣味なのか。このような、不思議なメタ的感想を持ってしまった時に、ある種のラノベ的表現に自分が全くついて行けないことを感じるのである。いわゆるラノベって全然読んでみたことは無いから確とした感想では無いのだが。そもそも、おそらくこの小説群もいわゆる「ラノベ」だと思うので(元々の出版社は富士見書房である)こんなことを考えた。