野尻抱介「サリバン家のお引越 クレギオン4」



相変わらず謎の「クレギオン」シリーズ第4弾。とある星から宇宙ステーションに移住する一家の仕事を請け負った弱小運送会社の話。普通の仕事かと思ったら実は無理難題が降りかかり、大変な客を相手にしてしまったと思っても後の祭り、しかもついた先で極めてきな臭い状況が巻き起こり、最後はまたしてもずいぶんと物事を破壊して終わる。

これはなかなか。客の無理難題が次第にエスカレートして行き、問題は運ぶ荷物ではなく客の方だと運送会社スタッフが気づく箇所の描写など、サラリーマン的叙情性が強く感じられとても共感できる。物語自体も、最初のうちはホームドラマ的牧歌的な展開を見せておいた上で、すかさず荒れ狂う顧客、落ちる宇宙船、堕落する子供、氾濫する軍隊など、これでもかと世の暗部を描き出し、とても素晴らしい。最終的にはある種の大円団を迎えるのだが、このお話は「よい子の読者様」に向けて書き直された物であり、ほんとうは物凄い陰惨な結末であったのではないかと、妙な想像をしてしまった。でもねえ、最後のシーンは大円団と言うよりは、なにか死後の世界の描写のようで、なにかぎこちなく気持ち悪かった。そこも面白い。ところで、この解説はいったいなんなのか。作家が人の文章を褒め称えている文章など読みたくもないし、しかも例文まで示しながらとあってはなおさらである。しかもこの分析がまたひどい。なんとも些末な技術論に徹し、こんなことを考えながらこの人(もちろん野尻氏では無い)は文章を書いているのかと、寒々しい気分になる。それに、そこまで絶賛するほどの文章でも無いと思うのだが。とにかく、結局はある種のナルシシズムをまきちらしていて、見苦しいことこの上ない。この解説が無ければとても素晴らしい読後感だったのだが。