野尻抱介「フェイダーリンクの鯨 クレギオン2」



太陽の簒奪者の著者野尻抱介氏のクレギオンシリーズ第2弾。そういえばクレギオンって何だ?まあいいけど。宇宙マフィアから逃れるために辺境の地に逃れた運送会社の経営者と乗組員計3名は、雪玉(かな?)でできた不思議な輪っか上の宙域で開発のため立ち退きを迫られている住民に救助される。そこで最年少の乗組員の多分に感傷的な理由から、主人公たちはその住民達をどうにかして助けるための工作を開始する。

シリーズ第2弾しては、このまえ読んだ作品よりマンネリ感が漂っている気がする。これはこちらが読み慣れてきてしまったせいかもしれないが、登場人物達の行動がだんだんとコード化されてきてしまい、物語の新鮮味を失わせてしまっている気がする。そもそもタイトルからして物語の展開を語りすぎている気もし、実際ある程度読み進むと物語の展開がほとんど想像され、しかもその想像は裏切られない。でもまあ、面白かったから良かったのですが。相変わらず文章は淡々としながらもテンポ良く、読み進むことが非常に気持ちよい。登場人物の台詞も、ほどよく性格を表させながらわざとらしくはなく、非常に好感が持てる。でもなあ、買って数時間で読めてしまう軽さは良いのか悪いのか。コストパフォーマンスがあまり良くないのは、小説の出来の良さを意味していることもあり文句は言えないが。この勢いだとシリーズ全てを読んでしまいそうだなあ。あと、「フェイダーリンク」なるものの説明はさっぱり分からなかった。こういうガジェットを織り交ぜないと「ハードSF」のカテゴリーから外れてしまうのかも知れないが、おそらくそれほどの根拠もあるとは思えない記述を読まされても興醒めなだけだと、ぼくは思ってしまうのだが。せめて図解でもしてほしかった。しかし、なにかネガティブことを書きすぎている気もするが、基本的にはとても楽しめました。日本人作家のSFもいいものはあるなあと、しみじみ思いながら読んでいます。