玄田有史「仕事のなかの曖昧な不安 揺れる若年の現在」

仕事のなかの曖昧な不安―揺れる若年の現在 (中公文庫)

仕事のなかの曖昧な不安―揺れる若年の現在 (中公文庫)

若年層の仕事と労働に関する最近の言説を横断的に検証しながらそのほとんどに不適当との証拠を示し、一般的に語られていることと本質的に考えなければならないことを整理、最終的にこれから若者がどのようにして働き、生きてゆくことが戦略として妥当か提案している論考。


ニート本や若年層に対する労働不安を取り上げた本のおそらく嚆矢と言える本であり、ずいぶん前から気になってはいたのだがハードカバーは購入もその後の置き場所も大変なため購入を躊躇していた。それが最近中公文庫で文庫落ちしたので読んでみました。


この種の本は、ある意味速報的な価値が大変に高く、その意味では本書の内容がある程度世間に流布してしまった後での読書はいまいち盛り上がりに欠ける。しかし、基本的な主張は未だに斬新で(この状況は大変困ったことだが)、特に「若年道がパラサイトしているのではなく、既得権を話さない中高年層のあおりをくらって良好な職場環境を手に入れることが出来ず、既得権者にパラサイトせざるを得ない」との議論には頷かされる。だいたい、若年層が3年で辞めるなんて今に始まったことではなく、昔からずーっといわれていたことではないか。しかし働かない中高年層、絞られる新卒入社、絶え間ない残業と非人道的な職場環境との指摘には涙がこぼれて止まらない(比喩的表現だが)。基本的な論考以降の、提言やエッセイとも思われる後半部分の叙述は、ちょっとつまらないしあんまり意味が分からなかった。でも、基本的な文献として押さえておく必要はある本でしょう。