多島斗志之「不思議島」

不思議島 (創元推理文庫)

不思議島 (創元推理文庫)

瀬戸内海の島に住む、幼い頃に誘拐されてどこかの島に数時間置き去りにされた経験のある若い女性教師は、島にやってきた診療所の医師と親しくなる。その医師は彼女のその過去の事件の追及を教唆し、彼女もそれに従い調査を進めるが、その過程で幼なじみにレイプされそうになったり、叔父が壺を割ったり、父親が交通事故にあったりする話。

物語は端正に構築され、文章も静かで上手、読み物としては質が高い。いいのではないのでしょうか。非常にきちんと書かれていて、読みどころとツボをはずさない、良くできた物語でした。しかし、残念ながら僕は趣味が悪いので、このような物語を楽しむことは全く出来ず、中盤からはとりあえず読み終わることのみを目標に読み飛ばしてしまった。その最大の理由はあまりにも物語の構成が定型的すぎるためで、それは、例えば文章で言えば女性の話し言葉であり、物語で言えばあまりにも白々しい展開に表れている。前者に関しては「しらないわ」などとしゃべる女性は見たことがないし、後者に関してはこの物語の展開は中盤にもなればあからさまといって良いほどの演出であろう。昼過ぎの1時間半のテレビドラマの台本としては良いのかも知れないが、文庫でまじめに読み通すことが出来るほどのものでもない。出会った二人が何度目かのデートで砂浜で初めて交合する場面には、感慨深い物すら感じてしまった。当然これはわたくしの個人的な意見な訳で、一般的に妥当するとはみじんも思いませんが。