田中哲弥「ミッションスクール」

ミッションスクール (ハヤカワ文庫JA)

ミッションスクール (ハヤカワ文庫JA)

とある多少イカレた学園を舞台に、国際軍事組織が校内戦争を始めたり、総務課に行くための大冒険が繰り広げられたり、素敵な狐に少女がとりつかれたり、理事長が巨大化して学園を破壊したり、学校が沈没したりするはなし。

基本的には「やみなべの陰謀」と同じで、勢いよく馬鹿馬鹿しい。そういえば「やみなべの陰謀」のストーリーを全く思い出せないが、本作もすぐにそうなるであろう物語の投げやりさと不必要で理由の全く分からない笑えない冗談に満ちていてとても良い。ほとんど物語には必然性が無く、起こる出来事もまるで悪夢のように脈絡がない。作者は本当に考えながら書いているのだろうか。むしろストーリーを考えようとしたのだけど思いつかず、しょうがないからシュールな展開でごまかしているだけなのではないか。そう思わせるほど構築への意志がみじんも感じられないのだが、それでも端々に挟み込まれる無意味でシュールな台詞立ちがなぜか気持ちよいんだよなあ。こういう文章を書く才能は、おそらく決して努力して身につけたわけではなくて、埋まらなく原稿用紙をなるべく頭を使わずに埋めようとしていたらこんな文章が書けるようになってしまったのではないかと思う。面白かった。