山田正紀「翼とざして アリスの国の不思議」
- 作者: 山田正紀
- 出版社/メーカー: 光文社
- 発売日: 2006/05/20
- メディア: 新書
- この商品を含むブログ (19件) を見る
何を読んでも基本的に絶賛したくなる山田正紀だが、この小説はちょっと読み通すことが疲れてしまった。そもそも、山田正紀氏のホラー調の文章は何となく苦手とするところであったのだが、本作にもその香りが感じられ、いつものぐいぐい引き込まれる牽引感ではなく、ざらざらしすぎてのどにひっかかってしまったような、多少楽しめる範囲を超えてしまった違和感が感じられて、なかなか大変だった。非常に茫漠として、思わせぶりながら説明が少なく、ストレートなようでいて非常にひねくれた独白は、いつもの山田正紀調でとても好きなのだが、物語全体に覆い被されている仕掛けはあまりに大時代調というか、物語の構成上アナクロニスティックにならざるを得ないのは分かるのだが、それでもちょっとバランスが悪い気がしてしまう。要は、ちょっと物語に無理がありすぎる。まあでもとても楽しめたことは楽しめたのだが、山田正紀氏の文章がよほど好きではないと、この小説は楽しめないだろうなあ。