ジェフリー・ディーバー「獣たちの庭園」

獣たちの庭園 (文春文庫)

獣たちの庭園 (文春文庫)

ナチスが台頭し社会の主流派となったドイツを舞台とし、アメリカからナチス高官暗殺のために送り込まれた殺し屋の、数日間にわたる暗殺の試み苦労と失敗と成功の話。


これもなかなか。物語は基本的に殺し屋の視点と、殺し屋を追いつめるドイツ人刑事の二つの側面から推移するのだが、時代が第二次世界大戦に設定されているため、捜査手法や殺し屋の工夫が原始的というか、素朴なところがなかなか雰囲気がある。一方で物語自体は、いつもの調子でテンポ良く、場面の展開も心地よい。


しかし、いわゆるジェフリー・ディーバー的な、多少強引さも感じられる物語の展開、どんでん返し的進行は抑えられ、淡々としながら着実に物語は進行する。主人公がミラクルすぎるところ、物語の進行がご都合主義的すぎるところなどは、なんとなくこの作家も「男の子作家」だなあと思いながら読みもしたのだが、それでも2.5センチはあろうかという分厚い文庫本を、苦もなく読み通させてしまう牽引力はさすがである。「ボーン・コレクター」のシリーズは正直言ってあんまり肌が合わないのだが、ほかのは面白いですねえ。