伊坂幸太郎「陽気なギャングの日常と襲撃」

陽気なギャングの日常と襲撃 (ノン・ノベル)

陽気なギャングの日常と襲撃 (ノン・ノベル)

ギャングを副業とする喫茶店店主、公務員、派遣職員、よく分からない人の4人が、会社社長の娘の誘拐事件に巻き込まれつつグルーブ感と強引さで乗り切る話。


面白かった。あー、よかった。伊坂幸太郎氏の作品でも愁眉の出来ではないかとずーっと主張していた「陽気なギャングが地球を回す」の続編。相変わらず断続的な章構成と紋切り調の会話文でテンポ良く物語は進む。最近伊坂氏の小説はどうもまどろっこしい展開が多くて面白くない(小説の出来が悪いといっているのではない)のだが、本作は僕が最も素晴らしいと思う伊坂幸太郎氏の切り返しの良さというか、歯切れの良さというか、リズム感の良さが全編にみなぎりとっても素晴らしい。


物語は相変わらず、読み終わってみれば予定調和的な地点に着地し、しかもなんとなくその展開を予測しながら読めてしまうため本格的に意表をつかれると言うこともなく、なんとも心地よい牽引力に支えられぐいぐい進む。でも、僕はこのおさまった雰囲気が好きなのです。非常に構築を意識し、ある意味計算され尽くされた小説であり、その意味で予想外の展開や破滅的な破綻は物語の中に生じない。でも、こんなに綺麗に言葉と物語を収めると言うこと自体が、極めて力強い構築への意志と実践を感じさせてくれてとても心地よい。確かに男の子小説と言われてしまうのも分かるが、やっぱり伊坂氏の小説は、この構築性を背骨に持ったエンターテイメント性というか、とにかく物語の面白さをいやというほど味あわせてくれるところが、とても好きなのです。