北森鴻「ぶぶ漬け伝説の謎 裏京都ミステリー」

ぶぶ漬け伝説の謎 裏京都ミステリー

ぶぶ漬け伝説の謎 裏京都ミステリー

元広域窃盗犯である主人公は、現在は京都の静かなお寺で寺男としてひっそり暮らす。そこへ、バカミスを受賞した幼児的で錯乱的なミステリー作家と、これまた幼児的なマイナー新聞の文化欄の記者が、どうでもよい話や事件を持ち込み、最終的に和尚の助けも借りながら様々なトラブルを解決する話。


北森鴻といえば、デビュー当初は「狂乱廿四考」や「花の下にて春死なむ」など、端正で美しく、完成度の極めて高い作品を輩出していた作家である。一方で、最近の作品にはあまり緊張感を感じることができず、なんとも残念な気分になることが多かったので、近頃は新作を読むことを辞めていたのだが、これは、確か最後に読んだ新作「支那そば館の謎」の続編であり、それは結構面白かった記憶があったので買ってみた。しかし読み終わっての感想としては、やっぱりずいぶん残念な出来でした。


言葉遣いには全く鋭さや緊張感を感じることがなく、物語自体もほとんど構成が無い。キャラクターの性格付けをできるだけ極端で濃くすることによって、なんとか物語のテンションを保ってはいるが、肝心の物語は破綻寸前で、まるでアニメの脚本を読んでいるかのようである。最初の話はなにが筋の中心なのかさっぱり判らず、読み終わってもだからどうしたという気分になるしかない。不必要に細かくくどい料理の記述は、物語の筋とは何の関係もなくむしろ惰性を感じさせるのみである。山田風太郎でも読んで、この不愉快な気分を払拭しなくてはなあ。