山田風太郎「明治バベルの塔 万朝報暗号戦」
明治バベルの塔―山田風太郎明治小説全集〈12〉 (ちくま文庫)
- 作者: 山田風太郎
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 1997/10/01
- メディア: 文庫
- クリック: 10回
- この商品を含むブログ (10件) を見る
これはものすごい。山田風太郎といえばエッセイ以外は忍法帖と警視庁草紙しか読んだことが無く、警視庁草紙は素晴らしく面白いと思ったが忍法帖は素晴らしく馬鹿馬鹿しいがそこまでのものとは思わなかった。それでこの本が古本屋で200円だったので読んでみた。目から鱗とはこのことである。こんなに格調高い小説を、こんなにも豊かな発想で、瑞々しく書ける人だとは知らなかった。これは、なんとも遅すぎたことに残念な気分を感じる一方で、非常に嬉しい発見だった。こんなに素晴らしい文章をまだ読んでいなかったとは。これでずいぶん楽しむことができる。
とにかく、文章が素晴らしい。物語も、大上段に振りかぶることは無いが、なにか極めてしっかりとした視線と落ち着いた構築が、非常に安心感があるとともに読み応えを感じさせる。とにかく達者、とにかく上手い。さすが、朝日新聞に「あと千回の晩飯」を連載中に癌がみつかり、「あと千回くらいの晩飯かと思っていたら300回くらいになってしまった」とぬけぬけと書くだけのことはある。これは嬉しい発見だった。とりあえず次は「ラスプーチンが来た」でも読んでみようかなあ。