レイ・ブラッドベリ「ウは宇宙船のウ」

ウは宇宙船のウ (創元SF文庫)

ウは宇宙船のウ (創元SF文庫)

宇宙にまつわるSF短編集。どちらかというと叙情的な雰囲気が強いが、物語自体は幻想小説と言うよりはしっかりとしたSFが多い。


Y兄がレイ・ブラッドベリを絶賛していたため、試しに買ってみた。誰に聞いても評判が良い作家なのだが、いままで何となく手が伸びなかったのだが、それなりに期待していたのだ。しかし、しかししかし、なんとも苦痛に満ちた時間が待ちかまえていた。とにかく、翻訳がものすごい。普通に日本語として意味が通っていない、原文を読んで対照させてはいないのだが、おそらく翻訳はかなり精度は悪いに違いない。また、言葉遣いも、あまり悪口は言いたくは無いのだが、ひどすぎる。


そもそも、この短編集自体のタイトルが「ウは宇宙のウ」(これもかなりいかがなものかと思わざるを得ない翻訳だが)の一方で、そのタイトルの由来だと思われる短編のタイトルが「「ウ」は宇宙船の略号さ」となっているのはいかなることか。作品自体のタイトルはさすがに修正することはできなかったので、短編集自体のタイトルは変更したと言うことか。そんなにひどいと思うのならば、全て翻訳をしなおして出版すれば良かったのに。ほかにも面白いタイトルや表現が頻出するのだが、その最たるものが「この地に虎数匹おれり」。「おれり」ってなんですか、「おれり」って。何語なのだが、よく分からない。その他にも疑問に感じてしょうがない翻訳が頻出する。おそらく原文は叙情性溢れた素敵な物語なのだと思うが、翻訳、つまり文章の調子が台無しにしてしまった好例である。あんまり悔しいので原文で読みたくなってしまった。