化野燐「件獣 人工憑霊蠱猫」

あやしい人々のあやしい策動によって大量の妖怪がうごめく学園都市で、祭祀の後と思われる遺跡が発掘されるが、時を同じくして怪異が相次ぎ、発掘のスタッフにも異変が起きる。その原因を究明し解消するため、様々な呪符を扱うスキンヘッドの青年やコンピュータマニアの女性や妖獣にとりつかれた元学生やらがたたかうはなし。


シリーズものの第四作目。前作から間があいてしまったので、すっかりこれまでの展開や登場人物の属性を忘れてしまった。でもまあ、問題なく楽しめる。このシリーズに全体として感じることは、登場人物の「属性」としての性質が強く、なにかテンプレートで書いた登場人物と粗筋だけで物語が成り立つ、要は極めてアニメ的な雰囲気を感じる一方で、意外と物語自体は力強く文章も上手い。一歩間違えればとんでもなく薄っぺらい物語になってしまいそうなところで、微妙なバランスをとりつつ読める読み物としての構成も保ってもいる。もしこれを意識的に行っているのだとすれば、この作者はものすごい力のある人である。


さて、物語の方は件(くだん)にまつわる話で、これは当然内田百けんを思い出すのだが言及が無く少し残念。ただ、相変わらずスピード感もリズム感も力強く、最後まで楽しめた。かといって、別に何かが残るわけでも無いのも相変わらずだが。また、物語全体の構成としては、ちょっと疑問が残る。結局、この騒動は解決しているのか?読みようによっては極めてシュールで破綻した終わり方になっているとも思い、そこだけは本当に面白かった。