鯨統一朗「KAIKETSU!赤頭巾侍 」

KAIKETSU!赤頭巾侍

KAIKETSU!赤頭巾侍

直情突進傾向の強い浪人が主人公。殺人事件が起こると犯人を知人の瓦版屋に尋ね、たいした根拠もないのにその人を犯人と決めつけ斬り殺す。そのたびに殺してしまった人が犯人ではないような証拠が現れるのだが、追いつめられた勢いで見事な推理を展開、やっぱりその人が犯人であったことを論証する。


確かに鞄に読んでいない本を入れたはずだったのに、同じ岩波の新書間違いで、もう読んだ本を入れてしまっていた。悔しいので書店に走り、慌ただしく何でも良いから手に取った本がこれ。たいした根拠もないのに犯人とおぼしき人物を叩ききり、窮地に陥ってへりくつを連発するとの帯に引かれ購入。本当に無実の人を殺して、あり得ない推理を展開するような極めてシュールで推理小説脱構築した話ならば面白いと思ったのだが、意外と普通というか、極めてジャンル的にミステリーであったのでがっかりした。話は全て似通った構成で、テンプレートでつくったかのよう。また、起きる事件も何とも理解に苦しむどろどろとした物で、これが悪趣味というものかとなんとなく納得した。話の構成にいい加減飽きてきたときに、これまた唐突に同性愛的描写が出てきたときには、あきれるというよりは悪趣味を追求する姿勢に敬服してしまった。