フィリップ・K・ディック「ウォー・ゲーム」
フィリップ・K・ディック短篇集〈2〉ウォー・ゲーム (ちくま文庫)
- 作者: フィリップ・K.ディック,Philip K. Dick,仁賀克雄
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 1992/09
- メディア: 文庫
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まあ、いつものディックでした。しかし、なぜかおとなしい感じが。極めてSF的に作られていて、良くできてしまっている。あの、ディックの底知れぬ魅力の源である絶え間ない不安感や違和感、行き当たりばったりに思えて不思議と着地点をめざす奇妙な構成、あらわれては消えてゆく登場人物、全く無視される伏線などが、ほとんど感じられない。唯一ディックらしい不気味な作品はといえば、宇宙で乗組員全員が死亡したことが確認された宇宙船が、何度も何度もその6人の乗組員とともに戻ってくる作品か。この作品の恐ろしいところは、戻ってくる乗組員の視点から物語は始まるのだが、彼らはたちまちのうちに虐殺されてしまい、そのやりかたに一抹の不安と恐怖を憶える捜査員の視点から、実は彼らが宇宙からの何らかの異物、またはメッセージと思われていることが明らかになるという構成。でも、基本的にはとても楽しめました。やはり、P. K. ディックにははずれは不思議と存在しない。「パーマーエルドリッチの三つの聖痕」のような暴力的ともいえる幻惑感こそ無いが、とても質の高い作品が集められている。しかし最近ディックの復刊が多いなあ。でも、体力無いと読めないから手が伸びない。こんな危ない小説群を読む人が多いとはとても考えられないのだが。やはり映画化が原因なのか。