ダグラス・アダムズ「銀河ヒッチハイク・ガイド」

銀河ヒッチハイク・ガイド (河出文庫)

銀河ヒッチハイク・ガイド (河出文庫)

イギリスの片田舎の一軒家が都市計画道路造成のために取り壊されているまさにそのとき、地球が銀河系の高速道路建設のために一瞬にして破壊される。ただ一人の生き残りと、たまたまペテルギウス星から地球を取材していた「銀河ヒッチハイク・ガイド」の記者は、どう読んでもよく分からない理由で難を逃れ、凶暴な宇宙人の宇宙船に潜り込むが即座に見つかり、宇宙に放り出されるのだがたまたま通りかかった元銀河帝国大統領が強奪した最新の宇宙船に救出され、太古の昔栄華を誇った惑星に着陸し富を探すも、ネズミに脳みそを取り出されそうになって逃げ出すはなし。


とにかくハイテンションなアドリブ感とグルーブ感に貫かれていてやたら楽しい。物語の筋は上にまとめたようにほとんどどうでも良いというか、あまり気にしなくても楽しめるし、気にしてもよく分からない。何より全編を通して、よくまあこんなにひねくれた文章を書けるなあと、始めは笑い転げながら、半ばくらいではほとほと感心し、最後にはいい加減馬鹿馬鹿しくなりながら読まされるくらいの、無意味にシュールでシニカルな描写に溢れているのがとても素晴らしい。いったいなんなんだ、この作者は。


西暦2000年前後と言うために「たまには人に親切にしようよ楽しいよ、と言ったばかりにひとりの男が木に釘付けにされてから二千年近く経ったその日」といってみたりする感じ。ロボットが出てきたかと思えば無駄に内省的で、全ての発言が悲観的かつ虚無的で読んでいてほんとうにいらいらする。ああ、でもこれ面白いですよ。おそらく翻訳も素晴らしいに違いない。なんたって訳者後書きまでテンションが高い上にとても楽しめる。「執筆時期にプライベートで不幸が重なったため、必要以上に暗い虚無的なトーンになったとも言われている」というシリーズ最終作も気になるなあ。