我孫子武丸「弥勒の掌」
- 作者: 我孫子武丸
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2005/04
- メディア: 単行本
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久しぶりにいかにも「本格推理」という感じの小説を読んだ。ここまで読者のために色々考えて精緻な物語を作り、しかも様式にのっとり大げさで大仰な舞台と語りの方式を一生懸命つくってくれて、ありがとうというかお疲れ様というかさようならというか。。いったいなんなのだろう、この読後の「何も残らない」感覚は。一つには、あまりにも物語の構成にこだわりすぎるあまり、その構成の美の一転に物語が集中してゆき、それ以外の全てがどうでも良くなっていったなかで、最終的に集中していった物語の先端がこれまたどうでも良いような終わり方を見せてしまった気がする。また、そのために用意された物語の舞台装置がなんとなく後味が悪く楽しくない。もしかしたらどこかに書いてあったのかもしれないが、結局なぜ殺人事件がラブホテルで起こったのか分からなかったし、そもそも殺人の理由もよく分からなかった。これは確かに読み飛ばしただけである可能性もあるが、あんまり気を入れて書かれていなかった気もする。でもまあ、よくこのような構成を考えつくなあと感心したことは確か。ことばを使った巨大なパズルというか、構成の迷路というか、とにかく凄いことは凄い。文章もこなれているが書き流した風でもなく、非常にしっかりしていてびっくりした。