津原泰水「アクアポリスQ」
- 作者: 津原泰水
- 出版社/メーカー: 朝日新聞社
- 発売日: 2005/01/12
- メディア: 単行本
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おそらく短編として書かれたアイディアを、何らかの理由で長編に仕立て上げたのではないか。そう感じられるくらい、物語が茫洋としてつかみ所がなく構築的ではない。舞台である世界の姿が、はなしが進むに連れてぽつぽつと明らかにされてゆくのは、演出というよりはむしろそもそも考えられていなかったのではないか。そう感じさせるぎこちなさといびつな雰囲気に包まれているものの、それが決して物語としての質を落としているわけではなく、むしろ不思議な感覚が心地よく楽しめた。しかしやっぱり、突然陰陽師の蘆屋道満と言われても、物語の練り込み不足ではないかと思ってしまうのではあるが。ともあれ、文章の切れ、世界の構築のされ方の鋭さ、匂い立つようなイメージ、混沌とした登場人物の口調、一方で静かで落ち着いた物語の語られかたなど、相変わらずこの人はものがたりが上手い。現実のあり方の多重性だのマヤラインだのさっぱり理解はできなかったが、何の問題もなく面白い。