村上宣寛「「心理テスト」はウソでした。」

「心理テスト」はウソでした。 受けたみんなが馬鹿を見た

「心理テスト」はウソでした。 受けたみんなが馬鹿を見た

というわけで、こちらも読んでみた。血液型による性格判断に始まりロールシャッハテスト、内田クレペリン検査、YGテストなどがいかに根拠が無く妥当性が無いかと言うことを、統計学的に論じたもの。


昨日の本に比べ、不思議とこちらの方が学術的な記述が多く、用語も多少専門的。そのため、おそらく専門的に勉強がしたことのない人にはとっつきにくいとは思うが、社会心理学の基礎を学んだことがある人にとってはこちらの本の方が読みやすいと思う。そもそも、最初から血液型による性格判断の検証を卒業論文に選んだ人の顛末によって始まるだけあって、研究者にとっては極めて現実的あり、身につまされるところが多い。コラムの形でカイ自乗検定や因子分析のはなしが差し挟まれているのも親切といえば親切。内容的には、やっぱりかという感じではあったが、一般に流布している「性格判断」的なテストの妥当性の無さが明らかにされる。


まあ、読んでいてなるほどなと思うところは多かったが、むしろそもそも人間の性格を分類するのにどれだけの意味があるのかと感じてしまった。自分で自分のこころを理解することすら難しいと思わざるを得ないなかで、それを客観的に「評価」することなど、そもそも可能なのだろうか。また、形式的にでもそのようにしたところで、それに何の意味があるのだろうか。そんなことを考えてしまった。昨日と同じような感想だが、全く持って心理学というのは「因果」な学問である。


ところで、この人の実験のやり方は、著者が自ら「倫理的でないと批判された」と書いているように、基本的な倫理コードに反している。被験者を「騙して」実験を行うのは、現在の基本的なルールでは認められないはずである。本書で行われている実験よりも、一般に流布している心理テストの方がよっぽど「非倫理的」であり、それを批判するためには本書で行われている実験は罪が軽いという趣旨のことを著者は述べていて、その議論も理解はできるのだが、何とも後味が悪いというか、納得できるとは言えない。また、この本も昨日の本も、何となく言葉遣いが乱暴で気になった。一般に「正しい」とされていることを批判的に書くには、これぐらいの勢いの良さというか、乱暴さが必要なのかもしれないが、無駄に著述の妥当性を損なっているような気がして、多少もったいないとも感じた。でも、勉強にはなりました。やっぱり、血液型と性格には関係があるわけは無いよね。そもそも、性格って何だ。本当に評価できるのか。