リリー・フランキー「増量・誰も知らない名言集」

増量・誰も知らない名言集イラスト入り (幻冬舎文庫)

増量・誰も知らない名言集イラスト入り (幻冬舎文庫)

リリー大先生が、身の回りの人やその人々の知り合いから拾い集めた、多くの場合異常なシチュエーションのおいてぽろりとこぼれた不思議で哀しくおかしいことばたちの一覧。とにかく、あいかわらず膝が砕け落ちるようなどうしようもない状況でのどうしようもないことばで埋め尽くされている。


雰囲気は「美女と野球」とほぼ同じで、力の抜けきったやる気のない文体でとても良い。基本的にはおもしろおかしく笑える話を書こうとしているように思えるのだが、たまに面白いと言うよりは泣けてきてしまうようなエピソードもあり、なかなか笑えなくて面白い。しかし、なんども登場するイラストレータ都築潤という人の変態っぷりがなかなか常軌を逸していて興味深い。「こんなの本当の訳はないではないか」と抗議を受けたとリリー大先生が書いているくらいだから、きっと本当のことなんだろう。ネットで検索してみるとちゃんとしたイラストレーターのようだが、読んでいるとオカマで変態としか思えない。なかなか素敵だ。ただ、一番面白かったのは後書きにある長嶋茂雄イチローに贈った色紙のことば、「野生のような鴨になれ」でした。