嶽本野ばら「ミシン」

ミシン

ミシン

雑居ビルの新築に併せ立ち退きをせまられた雑貨店の店主が、常連の女の子と「逃避行」にでて連れ戻される「世界の終わりという名の雑貨店」と、パンクバンドのボーカルの女性に恋をした女性が、そのボーカルの女性に殺人を教唆される「ミシン」の二編収録。


堂々と悪趣味で露悪的なところはとても良いのだが、それ以外に良いところを見つけろと言われると難しい。文章は明らかに太宰や三島的な大げさで冗長で耽美的な地平をめざしているのだとは思うが、物語の「若々しさ」と奇妙に整合していない気がする。このような「少女小説」的な文章を書かせれば、現代の作家であれば津原泰水にかなうものはなく、ちょっとさかのぼれば渋澤達彦が、ずいぶんさかのぼれば夢野久作がいてしまうわけで、残念ながら相手が悪いというか、天才作家が多すぎる土俵で勝負している気がする。「ミシン」のほうが文章の古くささが物語のぎこちなさと相性が良い気がしたのだが、「パンク」なロックの歌詞がちょっと。。僕の趣味では少なくともなかった。それより未成年を誘拐したあげく何日にもわたってセックスを繰り返しその回数を記録する「雑貨店」の方が、まだぐっと来たかなあ。