ジャック・カーリー「百番目の男」
- 作者: ジャックカーリイ,Jack Kerley,三角和代
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2005/04/08
- メディア: 文庫
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うん、これはいい。読み始めから、猟奇的で救いようが無く悪趣味な物語とは全くちがったテンションで突っ走る清々しいスピード感にすっかり心は気持ちよくなり、これのどこが「バカミス」なのか、これは単にとっても良くできた小説ではないかと思いながら、気がつくと読み終わっていた。とにかくこの絶望的までに救いようのない物語と、極めて軽やかながら落ち着きがあり、明らかに慎重に慎重に構築された語り口の落差がたまらない。確かに、物語自体はグロテスクな描写もあり、気持ち悪くもある。しかし、この読み終わった後のすがすがしさは何なのだろう。きっと、主人公が極度のアル中の友だちを必死に救おうとしたり、検死局長が自分の人生と向き直ろうとしたりするような、なにか優しい救済の物語が全編にちりばめられているからではないか。物語のテンポもとても良く、交わされる会話もなんだかしみじみしていてすばらしい。巷では「動機」の件が問題になっているようだが、僕には全然気にならなかった。そんなに変かなあ。このテンションからすれば無理はないし、そもそも面白いからいいじゃない?こんなに上質な作品は珍しいと思うのだが。