山田風太郎「甲賀忍法帖 山田風太郎忍法帖1」

甲賀忍法帖 山田風太郎忍法帖(1) (講談社文庫)

甲賀忍法帖 山田風太郎忍法帖(1) (講談社文庫)

徳川家の跡継ぎ問題を解決するため、無理矢理に代理戦争を戦わなければならなくなった伊賀と甲賀の忍者10人が殺し合うはなし。


山田風太郎といえば、いつだったか朝日新聞に「あと千回の晩飯」というコラムを連載中、胃ガンか何かが見つかってしまい、ぬけぬけと「あと千回の晩飯のはずが、300回くらいになってしまった」などと書いていた人で、とにかく豪快というか、はちゃめちゃというか、ものすごい。もちろん有名作品といえば忍法帖シリーズだと思うのだが、今まで読んだことが無かった。これは講談社文庫で新刊でも無いはずが、なぜか平積みになっていて目を引いたので購入。仲間由紀恵主演で映画になっているのか。


お話は、期待通りはちゃめちゃというか、ぐずぐずに崩れてしまっているというか、なんとも素敵な力の抜け具合で面白かった。話は単純で、婚約までした男女がはた迷惑な跡継ぎ争いのとばっちりをうけ、敵味方に分かれ殺し合うというもの。まあ、筋立てはどうでもよく、その豪快で強引なストーリーと、Xメンをできるだけ馬鹿馬鹿しくしたような登場人物たちの入り乱れ具合が単純に楽しい。一番面白かったのは壁の中に入り込むことができる男の死に様で、なんだか良く理屈が分からんが生々しくて良い。ただ、思ったより爽やかというか、もっとどろどろした世界を想像していたのだが、結構泣かせる場面も会ったりして意外な感じがした。基本的には残酷話で、久生十蘭を読んでいるような爽快感もある。キャプテン・フューチャーと一緒に、少しずつ既刊を読んでみよう。