香山リカ「いまどきの「常識」」



「少年事件には厳罰を」、「結局お金がものをいう」、「自分らしい仕事をしよう」、「ゆとり教育は失敗だった」、「すべては「自己責任」の結果」、「B型人間は自己中心的」、「ナショナリズムは普通で健全で自然」など、なんとなく最近の「常識」とされる事柄を痛烈に批判し、皮肉った内容。分析は精神科の医師としての専門的な立場とともに、むしろ非専門的な論理の立場からもなされる。

これはY兄が「思ったよりもおもしろく凄く良い」といっていたので買って読んだ。その通り。僕もY兄と同じく、この人の本をまさか読むとは思ってはいなかったが、こんなにまともな人だとは知らなかった。これから気をつけて読んでみなくては。とにかく、「常識」がカッコ書きされていることからもわかるように、世の中で何となく「常識」とされていることが、本当にそうなのか、なにかおかしくないのか、それがちゃんと考えた結果なのかと、たたみかけるように問いかける。これは痛快でたまらない。それも感情的なことばの投げかけなのではなく、かたや専門的に、かたや論理的にことばを組み立て、極めて精緻な議論を展開する中で、世の多くの「常識」の非論理性と誤謬を指摘してゆく。その論理にはところどころ不思議な点もあるが、全体としては極めてわかりやすい口調で明快に述べていて、非常に納得した。おそらく、繰り返して訴えられているテーマは、「判断停止」になってはいけない、自分で考えなくてはいけない、ということである。これはとても、心強い。