エドモンド・ハミルトン「恐怖の宇宙帝王/暗黒星大接近! キャプテンフューチャー全集1」



エドモンド・ハミルトンがそのB級テイストを炸裂させる「キャプテンフューチャー」シリーズ第一弾。「恐怖の宇宙帝王」ではキャプテンフューチャーの誕生秘話が語られるとともに、人間を「先祖返り」させてしまう方法を考案した「宇宙帝王」の正体を暴く。「暗黒星大接近」では巨大ブラックホールの接近をタネに人類を脅すザロ博士を正義の鉄拳がたたきつぶす。

誘惑に負けて結局買ってしまった。これは文庫11巻シリーズの第1巻。シリーズ最初とのこともありいろいろと説明調でまどろっこしいが、それになれるとジェットコースター的予定調和の世界のただ中に自分を発見していてとても面白かった。なんといっても、1940年に構想された未来の科学技術の姿が抜群に面白い。当然コンピュータは無いので書籍類はマイクロフィルムで持ち運ばれているし、実験だってシミュレーションではなく本人が行う!デジタル処理という概念が無いので、脳だけで生きる男はやたらアナログな触覚器官を持つし、当然計算はノートで行うので、金星(だったか?)の学者は敵のアジトに2週間分の計算を記録したノートを忘れ、取りに帰ると言ってキャプテンフューチャーを困らせる。でもね、それでも全然面白い。やっぱり物語はそのリズムと構成が命だし、どんなに未来の世界がまとはずれであったってそれがしっかりしていれば楽しめる。こういうのが、ある意味決して古びることのない小説の、一つのあり方なのかもしれない。今まで読んできたメランコリックで叙情的な小説たちとは全くちがう、冒険譚的雰囲気もなんとなく新鮮で面白い。なかなかです。