ドン・ウィンズロウ「歓喜の島」

歓喜の島 (角川文庫)

歓喜の島 (角川文庫)

元CIAの調査官が退職してNYで調査会社に就職するが、ケネディをモデルにしたある上院議員セックススキャンダルのもみ消しに巻き込まれ、いつの間にか恋人まで巻き込まれた上に最後はやたらハードボイルドな乱闘騒ぎを起こす話。雰囲気の良い語りと1958年のマンハッタンの詳細な描写の中に、セックスの話を延々と描いたもの。おまけに途中で全く意味の分からないアメフトの描写も挟み込まれ、読書の無意味感が否応なしに高まる面白い展開。というか、なんだかくだらない。誰と誰が寝て、そのペアがどのようにつながっていって結局は誰と誰はベッドを介した関係が生じているだとか、誰と誰がホモセクシュアルな関係であるとか、信じられないことにそれでしか物語が進まない。一人称で語る主人公が、自分の意図を説明することなく淡々と行動し、最後にすべての意図が明らかになるという、緊張感のある語りはとても良いのだけれども。