D. B. ワイス「ラッキー・ワンダー・ボーイ」

ラッキー・ワンダー・ボーイ (ハヤカワ文庫 NV)

ラッキー・ワンダー・ボーイ (ハヤカワ文庫 NV)

80年代のゲームオタクが、仕事の都合上少年時代に解けなかったゲームの謎を解こうとする話。

なんだか難しい本を読んだので、軽くて馬鹿馬鹿しい本を読もうと。解説をみたら、アーケードゲームオタクによるゲームオタクのためのアーケードゲームオタク小説と書いてあったので、これだ!と思って買ってみた。しかし、残念ながら全然馬鹿馬鹿しくなく、単につまらない。これは、オタクっぽいカルチャーに触れたインテリが、オタク文化をなんとかハイカルチャーとして認めたいがために、どんなにそれが「実は」高尚であるか、みんなにふれて回るために書いた本って感じ。その裏付けとしては、文章的にはギブソンっぽく、物語的にはディックっぽく、雰囲気的にはルーディ・ラッカー的に書いてみたって感じ。でも、残念ながらこの作者には上記の誰にも届くほどの文才もインスピレーションも感じられない。だから、結局オタク文化オタク文化なんだよ。かっこつけてみる時点で無理なんです、秋葉原を闊歩する人々が、論文書いたって意味がないのですよ。アイルランド文学の博士号を持っているなら、アイルランド文学の本を書こうよ。なんだか腹が立ってしまったのは、自分が博士課程に在籍して、こんなしょうもない本を読んでいるからなのしれない。