桜庭一樹「少女には向かない職業」

少女には向かない職業 (創元推理文庫)

少女には向かない職業 (創元推理文庫)

中学二年生が義父と親友のいとこを殺すに至った顛末。

ネットの各所で話題の桜庭一樹氏だが、この本で初めて読んだ。「ラノベ」と呼ばれる分野には、読んでもいないのだがおそらく定型的なキャラクターだけで成り立ち、文章や構成はしまりのないものに違いないという思いこみがあり、今までほとんど手をつけていない。桜庭氏はこの「ラノベ」という世界での売れっ子だと認識しているので、当然読む気はしない。それが東京創元社ミステリ・フロンティアというシリーズで刊行されたので、手に取ってみた。結論としては、あまりに典型的に「演劇的」でびっくりした。面白かったかと言われると、つまらなくはない(悪魔は否定形でしゃべる)。ただ、あまりにも典型的というか、だからどうしたというか、Jリーグの上位チームの消化試合というか、要はあんまりぐっとこない。たちが悪いのが、この人の文章、特に主人公の女の子の台詞や友だちとの会話がとっても力強く生き生きしていて、物凄いグルーブ感があるところ。物語自体も陰惨で爽快。ただ、それでもただ、狙いすぎのような、計算されすぎてませんか?って感じがしてしまう。初期の舞城王太郎みたいな、さようならーって感じの飛び方はないし、そういう路線は決して選ばない人だと思う。もっと毒々しく書いてほしいなあ。