マイケル・マーシャル・スミス「みんな行ってしまう」

みんな行ってしまう (創元SF文庫)

みんな行ってしまう (創元SF文庫)

幻想小説、SF風なホラー、不条理なホラー、よく分からないもの、その他12編を集めた短編集。

表題と表紙の絵に惹かれて買ってみた。最初の方に収録されている表題作とそれに続く数編は面白かった。単に友だちが引っ越してしまう話を、妙なひねりをきかせて温度が下がるような話にしていたり、J. G. バラード的な終末期の世界を懐古的に描いてみたり、日本人で言えば日影丈吉のような、海辺の街にやってきた不思議な絵描きの男がその技術を暴発させる話など、物語の構成も巧みだし雰囲気がしっとりしていて良い。ところが、後半のいわゆるホラー色が強くなった部分はぐっと面白くない。趣味のせいだとは思うが、ホラーってのは基本的に読む人を不愉快にさせるような構造があるような気がして、あんまり読んでいても面白くない。このような小説を書くと言うことは、作者の技術的な作業のような気もして面白くないし、またそうでないならなぜこのようなものを書くのか理由が分からない。一方で、おそらく翻訳によって微妙なニュアンスが上手く伝わらない可能性があるジャンルだとも思うのだが。読み進めるうちに読書がどんどん作業的になってしまい、残念だった。