石田衣良「電子の星 池袋ウエストゲートパーク?」

電子の星 池袋ウエストゲートパークIV (文春文庫)

電子の星 池袋ウエストゲートパークIV (文春文庫)

複雑な本を読む傍ら息抜きに。明らかにオヤジキャラな主人公が池袋のギャング少年たちやヤクザたちとつきあいながらトラブルを解決してゆくシリーズ第四弾。

今回は中編四本。どれも普通に面白い。あまり無理をしてカタルシスを演出するという感じが無く、なんだかとっても上手い。ちゃんと泣かせるところでは泣かせるし、ビール飲みながらふーんとか流して読んでいたら危うく泣きそうになる。相変わらず主人公のキャラクターが老成しすぎてる感があり、またそのような認識で描かれる池袋のギャングたちも戯画的でしかないが、まあでも面白いからいいや。でもね、ちょっと登場人物たちの台詞が大げさというか、舞台の台詞みたいでたまに脱力する。ちょっと単純にすぎるというか、読者の予想を追随しているというか。と感じながら読んでいたのだが、不思議とそれでもこの物語のなかに立ち現れる世界は、決して単一の価値観を許さない。悪者がつくったラーメンはおいしかったり、主人公が仕掛ける拷問じみた脅しは、仲間から痛烈に批判されるし。この雰囲気は、悪くないなあ。