奥田英朗「延長戦に入りました」

延長戦に入りました (幻冬舎文庫)

延長戦に入りました (幻冬舎文庫)

スポーツにまつわる小咄34本。

タイトルの力の抜け具合が気にはなっていたのだが今まで未読。最近「サウスバウンド」という本を出していたので、それも買おうかと思ったのだが厚くて高くて、ちょっと手を出しかねていた作家だが、先週pioが大量に貸してくれたので、まずはこれから。スポーツにまつわるあれこれを斜め後ろから眺めながら、ある種自己満足的に、つまり自分に語りかけるようにして実は自分の特殊性や異常性を誇らしげに語る。これはこれでとても興味深い。決してけなしているわけではなく、ある種のサービス精神のあり方として、微妙なバランス感覚が感じられる。週刊誌に連載しただけあり、読者にこびることも忘れない。しかも34本もあるだけに、神がかったようにリズムの良いもの(高校野球の話が一番だと思う)もあれば、なんとなく書き始めてしまったから必死になってネタを入れて終わらせにいっているのではないかと思われるもの(大顔の悲劇とか)もあり、なかなかはらはらして読める。でも僕が好きなのは、高校のハンドボールで不良と対戦してしまった話のような、明らかに体験談だなあと思われる淡々とした話でした。そういえば、僕もボクシングで必ず画面に映るおじさんは気になるなあ。あと、僕の先生の先生は大相撲東京場所の初日、中日、千秋楽は必ず砂かむりで観戦され、その姿をテレビで見てみんなお元気でいることを確認している。