山田正紀「幽霊軍団 <スーパーカンサー3>」

怒ると無敵になる超人的な力を持ったゴシップ雑誌の記者である青年は、捨て子であったところを謎の足長おじさんからの支援で高校まで卒業したのだが、ある日その足長おじさんから接触をうけ、彼がなんと軍国主義の復活をもくろむ誇大妄想狂にしてアナクロニスティックな変態であることを知り、彼の野望やその野望にまつわる冗談としか思えないような悪役達を次々と虐殺してゆく話。


あまりにも展開が力強いので、3作目まで一気に読んでしまった。シリーズ全体としてみるとこの最終作はさすがに疲れが見えたか、ところどころに物語のろれつが回らないような訳のわからないほころびが見え面白い。例えば、おそらく最初はヒロインの役割を振り分けられていたと思われる女性が物語の行きがかり上姿を消し、と思ったらもう一人ヒロインの役を振られた女性が出現してしまったため、最初のヒロイン候補は最後の最後に実は悪役側の人間だったと明かされるなど、物語の展開というよりかは物語の整合が本当にとれるのか、手に汗握るはらはら感が楽しめる。相変わらず登場人物はアメコミのコピーで訳がわからなく、ストーリー展開もご都合主義としか言いようがないが、しかしまったく手抜きという感じはせず、むしろ結構本気で楽しめた。なんでかと考えるのも馬鹿馬鹿しいが何となくの感想としては、山田正紀は地の文はとてつもなくチープ感が漂うのだが、登場人物の台詞が異様に切れがよい。このあたりのアンバランスが気持ちがよいのかもしれない。