石田衣良「赤・黒 池袋ウエストゲートパーク外伝」

博打で大穴開けたオヤジがやけくそで行った狂言強盗に失敗したあげく、ヤクザに死にそうに脅されて金を取り戻すためにやっぱり博打をする話。


どうもウエストゲートパークは主人公と作者の精神的・年齢的ギャップが目につき始めて、少し無理があるなあと思い始めたのだが、これはそんなことを考えるまでもなくとても楽しく読めた。それは、おそらく主人公の年齢や職業がかなり作者と重なり合うところが多く、作者のなんだか駄目なところや色々な思いや愚痴やつぶやきがうっかり主人公の言葉となって浮き上がり、とても共感が出来るからなのではないかな。今までの主人公や少年・青年ギャングは全然出てこないけど、むしろお話としては非常に洗練されて、深みがある。


でも、ギャンブルものって基本的には「水戸黄門」的で、最終的には必ず勝って終わるわけで、その予定調和のなかでどこまで物語を盛り上げ、主人公を追いつめ、決められた結末に突き進んでいると言うことをどれだけ感じさせないか、ということに要点があるのだと思うが、このお話の場合はあんまり物語に対して必要があるとも思えない素敵な登場人物達が、無駄に物語をにぎやかにさせているところが良いのだろう。でも、ヤクザヤクザしているわりには、登場人物の台詞や人生観はなんだか青春系なんだよね。この気持ち悪さがまたよい。