倉阪鬼一郎「青い館の崩壊 ブルー・ローズ殺人事件」

「吸血鬼」としての生を生きる「ゴーストハンター」と「黒川」さんが、「吸血鬼原理主義者」のアジトと思われる「青い館」のはす向かいに引っ越すが、その館を調べる内に館の主の奇妙な叙述に遭遇し、思いあまって不法侵入して館の内部を確かめてみたら、とってもホラーな出来事を体験してしまう話。

相変わらず奇妙な話で、ホラーなのかなんなのかよくわからない。なんとなくホラーっぽいというか、叙述の過剰なおどろおどろしさと意味のないスプラッターな記述が目を引くのだが、本書中で語られる「ホラー」の定義、つまり日常的な世界の土台の形成があった上で、その世界が少しづつ崩れていくという範疇にはあてはまらない。なぜなら世界は全く日常的でなく、ゲイっぽい男性二人が猫のぬいぐるみの取り合いをしながら、それぞれ腹話術で猫の口まねをしてしゃべるという、背筋が寒くなるような世界が展開されているからだ。まあ、それはどうでも良いのだが、面白かったかというとあんまり面白くない。なにかキャラクターの設定と世界の構成の舞台裏を、舞台の斜め後ろからぼんやり見ているだけのような雰囲気があり、なんだか緊張感がないし物語がどうでも良く感じられて仕方ない。でも、そこそこ読めてしまうからこの作家の文章力は大した物だと思うのではあるが。でも、もっと面白い小説かけるよなあ。これだけ文章力と知識があれば。なんだか初期の澁澤を読んで感じた感想と同じだなあ。