天城一「島崎警部のアリバイ事件簿 天城一傑作選2」

「幻の作家」天城一の作品集の第二弾。前半は島崎警部がいわゆる時刻表トリックと格闘する短編集で、後半は普通のミステリ。

「傑作選1」のほうはかなり楽しんで読めたのだが、こちらはあんまり。一つには時刻表トリックに全く興味がわかないためか。だって、時刻表をこう読んでああ乗り継いでどうすれば何時何分に東京駅にいることは可能なんだよ!とかいわれてもふーんって感じだし、駅探で調べれば一発なんではないですか、って思ってしまう。ずいぶん時刻表そのもの掲載されていたが、こういうのを読むこと自体に楽しみを感じる人向けなんだろうなあ。ただ割と面白かったのは、上述のほぼ決定された構造をなんとなく脱構築しようとする力が、特に後半部分には働いていることで、そのあたりは結構楽しめました。鉄道好きにはもしかしたらたまらないのかもしれないけど、いったいそれ以外の誰が読むのか不思議な感じがする。後半の普通のミステリはそれなりに面白いのだけど多少古くさい。気になるほどではないし、歴史的作家だからしょうがないかと思いながら解説を読んだら、最後の作品は最近書かれたとあってびっくりした。でも、あいかわらず冗長性のない、極めて冷酷に選定された言葉遣いは素晴らしい。淡々として心地よく、リズムも最高。後書きに、自分は書き直すごとに文章を短くしてしまう傾向がある、と作者が述べているが、これこそが推敲だと思わせる良質な文章です。