西澤保彦「方舟は冬の国へ」
- 作者: 西澤保彦
- 出版社/メーカー: 光文社
- 発売日: 2004/08/20
- メディア: 新書
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この人は基本的にはとっても文章は上手く、人物の作り込みも無理がない上にお話も見事。しかし、なぜ面白くないのだろう。端的に言えば、手を抜いているとしか思えない。初期の西澤の作品には、なんというか追いつめられた痛々しさというか、無理矢理絞り出された知性のきらめきのようなものがあったのだが、ぐっと人気作家になってからは、なんとも軽くなってしまった。「夏の夜会」あたりからは失望することしきりだったのでもう買うのはやめようと思っていたが、やはりこの作品も残念な出来。でも、ほんの少しのところだと思うんだよな。昔の高校の教師の正確や言動があまりにも漫画的であったり、主人公があっさり相手の女に惚れられてしまったり、そういう結構小さなところの作り込みのいい加減さが全体を台無しにしている気がする。古本屋の主人が「最近西澤さんの本は売れないんだよね〜」といってあんまり良い値付けをしてくれなかったのを思い出した。がんばれ、西澤先生!