米澤穂信「犬はどこだ」

犬はどこだ (ミステリ・フロンティア)

犬はどこだ (ミステリ・フロンティア)

就職したもののアレルギーに悩まされ、2年で故郷に帰った青年が犬探し専門の調査事務所を開業するが、なぜか人捜しと地域の古文書の調査を頼まれてしまい、うっかり解決をしてしまうようなしてしまわないような話。

とても魅力的な雰囲気で進むし登場人物も素敵、結末の後味の悪さや語り口の歯切れの悪さも気持ちよく、結構趣味にはストレートで合っている作品だと思うのだが、なにか物足りない。おそらくそれは多少単純すぎる話の展開だったり、途中途中に差し挟まれる言葉のやりとりがいまいち切れが悪かったり、そもそも後味の悪い話を書くのがあまり好きではないのでないかと思われる作者の傾向がどこかしらにでてしまっているからなのではないか。ストーキング男から調査対象の女性が狙われるところなど、ここぞといわんばかりに気持ち悪く描けばよいのに、なぜか2歩ほど引いたところで語っている感じがする。でも面白かった。次はもっと面白いといいなあ。表紙は超かっこよい。ブックデザインは岩郷重力+WONDER WORKZという人たちで結構いろんなところで見かけるが、こんなすっきりしたデザインもするのか。表紙だけでも買って良かったと思わせられた。